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Lee-Byung-hun addicted

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『100個目の幸せ』 百記事UP記念特別編

「ビョンホンssi、ほらもう起きて。ほら、もう行かないと」

そう言って彼を揺さぶる揺の手首を

ビョンホンは目をつぶったままぐっとつかんだ。

「いやだ。もっとこうしていたい・・」

ビョンホンは揺をベッドに引き寄せる。

「お野菜は朝採った方が美味しいんだって。

私は夜食べても美味しいから。」

揺はそう笑いながら言うとビョンホンの頬にキスをした。

ビョンホンは仕方なさそうに苦笑しながら片目をあけ、

揺をチラッと見た。

そう。夕べも彼女は最高に美味しかった。

「?」

「いや。別に。そうだった。

今日は畑の手伝いするんだったっけ。」

ビョンホンは首にタオルを巻いたTシャツにデニム姿の揺を

眠そうな目で眺めながら言った。

「早くしないとトマトときゅうりの朝露がどこかに行っちゃうわ。」

揺は嬉しそうにビョンホンの手を引っ張りながら足踏みをしている。

ビョンホンはそんな彼女が無性に可愛く思えた。

「僕はきゅうりより揺がいい。」

彼は笑いながら揺をまた引き寄せ抱きしめた。

「私はあなたよりトマトがいい」

ビョンホンの耳元で揺がささやく。

「うそ」

驚いたビョンホンは彼女をはなすと彼女の顔をまじまじと眺めた。

「うそ」

揺はあっさりとそういうとビョンホンに優しくキスをした。

そして彼女は

「じゃ、もう先に行ってるから。美味しそうなの全部食べちゃうわよ。」

と笑いながら言い残し

振り返ることもなくキャップをかぶり

さっさと階段を下りていってしまった。

「ちょっと待ってよ・・揺ってばっ!」




「さあ、出発するよ。ちゃんとつかまって。」

ビョンホンはそういうとバギーのエンジンをかけた。

すごい轟音があたりに響く。

「すごい音ねっ!」

後ろに乗った揺がビョンホンにしがみついて言った。

「えっ!」

ビョンホンが聞き返す。

「凄い音!」

揺はジェスチャーを交え繰り返した。

笑い出すビョンホン。

「何?」

「夕べの君の声ぐらい凄いよっ!」

「えっ!」

聞き返す揺。

「だから、夕べの君の声くらい大きいって言ったの!」

「信じられない・・・・・」

揺は真っ赤になって怒ると

運転しているビョンホンの脇腹をくすぐり攻めにした。

「危ないから、やめて。本当に。わかった。うそだから。

ゴメン。ねえ。本当に危ないからさ。・・・・・・・」


「あ~あ。面白かった。」

畑に着いた二人はゲラゲラ笑いながらバギーを降りる。

「うひゃぁ~。もう大豊作じゃない」

揺はキャップをかぶりなおして嬉しそうにそう叫んだ。

「お母様にここでご馳走になったトマト・・美味しかったなぁ~」

「えっ、いつ?」

「えっとねぇ~。ドームのイベントの後。あなたが私の手を離したとき」

揺はそういうとビョンホンを横目でちらっと見た。

ビョンホンは揺の方をみることなくそっと隣にいる彼女の手を握った。

それからゆっくりと彼女を横目でみるとにっこりと笑う。

「もう離さない・・」

彼は真剣な顔でそう言った。

だまって頷く揺。

そして彼女もにっこりと微笑む。

「じゃ、何から収穫しようか」

ビョンホンは手をつないだまま作業を始めようとした。

「ちょっと・・・なに?」

ビョンホンに引きずられながら揺が慌てて言う。

「えっ?もう離さないって言ったじゃん」

「いや、それはものの例えでしょ。

ほら、手つないでたら動きにくいしね。」

「いやだ?」

笑いながら聞くビョンホン。

「いやじゃないけど・・・」

揺は困った顔をしながらも彼の手を握り返してそう答えた。

「何だか手錠でつながれてるみたいでいいな。これ。」

ビョンホンは面白がってそういうと気にすることなく作業を始めた。

重いものを持つ時も二人で力を合わせて声をかけて持ち上げて。

穴をまたぐ時も声を掛け合い一緒に飛び越えた。

草を刈る時も揺が草を持ちビョンホンが草を刈った。

トマトやきゅうりやサンチュをはさみで収穫するときも

ひとりがトマトを持ち一人がはさみを入れる。

揺は彼に引きずられながら思う。

きっとこれからの生活もこんななんだろうな・・・と。

大変だけど面白くって。

二人で力を合わせて一歩ずつ進む・・・・・

ぼ~っと考え込む揺に向かって彼が言った。

「揺・・サボってないで。ねえ、ちょっとほっぺたかゆい。」

手が塞がっていた彼はそういって頬を揺の方に突き出した。

ビョンホンの頬にまた蚊が止まっていた。

「あ、」パシッ!

反射的に揺はまた平手打ちをした。

「何!」

「あ、ゴメンまた蚊がね。止まってたんだもん。」

「本当に?いや、絶対に違う。この間も怪しいって思ってたんだよね。」

ビョンホンは揺を白い目でにらんだ。

揺はそんな彼が無性に可愛く思えた。

そしてふいにキスがしたくなった。

「そんなに信じられない?私のこと」

そういってちょっとふざけて悩ましげに彼を見つめ

そっと優しく悩ましげなキスをした。

「信じます。すいません。ちゃんと信じます。」

ビョンホンはそういうと嬉しそうに笑った。

「よろしい・・・では作業を続けましょう。」

ニッっと笑って彼女は草取りをはじめる。

そんな彼女の横顔を見ながらビョンホンは思う。

これからの人生・・・きっとこんな感じなんだろうな・・・・と。

収穫した野菜を並べながら

二人はずっとたわいもない話をし共に笑った。

「今日はサンチュを巻いて焼肉食べて・・・

きゅうりの冷たいスープでしょ~。

トマトの載った冷麺もいいわよね。

それから・・・ねえ、ねえ。ビョンホンssi、何食べたい?」

いつもなら間違いなく「揺」と答えるところだったが

ビョンホンはさっきのお返しにちょっと揺をからかってみたくなった。

人生には時に刺激が必要だ。

そんなことを昔誰かが言っていた気がする。

「う~ん。カムジャタン。」

「?」

想像していたのと違う答えに揺はちょっと拍子抜けした。

(ふーん。望むところよ。)

そう思った揺はまた彼に聞いた。

「じゃ、次に何食べたい?」

「う~~ん。トッポキ」

「あっ、そう。私も食べたいかも。で・・次は?」

「そうだな。ジャージャー麺」

「ああ、あれも美味しいわよね。でその次は?」

「そうそう。かきのジョン食べたいな。あれ、旨いんだよ。」

「ああ。確かに・・・他には?」

「パッピンス。最近食べてないし。

そういえばてつこさんご馳走してくれって言ってたっけ」

「あ、そう。」

揺はデザートが過ぎても自分の名前が出てこないことが正直ショックだった。

こんなくだらないことに何を真剣になっているんだろう。

どうも彼と一緒にいると思考回路が麻痺するようだった。

いつのまにかどうしても

彼の口から『揺』という言葉を引きずり出したくて

仕方がなくなっていることに揺は自分でも驚いていた。

自分は昔からこんな人だっただろうか・・・。

「どうしたの?元気なくなっちゃったよ。」

ビョンホンは揺の顔を覗き込んだ。

「別にどうしもしないけど・・・」

「じゃあ、メインディッシュ何がいいか聞いてよ」

「えっ・・・まだ食べるの?」

「早く」

「メインディッシュ何がいい?」

ちょっとためらいながらもちょっと期待を込めて揺は彼に訊ねた。

「辛ラーメン」

ビョンホンはそういうとゲラゲラと大笑いした。

ひとしきり笑ったビョンホンが気がつくと

揺は隣でむっとして土を投げていた。

「あれ、揺。どうしたの?何してるの?」

「辛ラーメンに負けたと思うと悔しくて・・・つまんない。」

「何でそういう発想なのかな。本当にこんな人見たことない。

最初から僕が意地悪してるの当然気づいてるのかと思ったのに・・・

3食君だけでも僕は生きていけるから。ほら、機嫌直して。」

彼はそういうと揺の肩をそっと抱きしめた。

(気づいてるに決まってるじゃない。それでも何だか悔しいのよ・・)

彼女は抱きしめられたまま耳元でささやく。

「私は3食あなただけじゃ生きていけない」

からかわれた腹いせにそういうと揺はゲラゲラと笑った。

「信じられない・・・」

ビョンホンはそういって彼女をにらむと彼女をくすぐり攻めにした。

「わかった。ごめん。うそだから。助けて。もう勘弁して。」

逃げまどう揺。追いかけるビョンホン。

二人は子供のように追いかけっこをしながら幸せに浸っていた。


「いい。こうやってちゃんとハンドル持って。」

帰りは揺が運転席に座り

その後ろに彼女を抱き込む形で彼がすわり、一緒にハンドルを握った。

「いや、何だか緊張する。バイクとかって運転したことないんだけど。」

不安げな揺の肩越しからビョンホンは揺の首筋にキスをした。

「はい、出発進行!」




「ねえ、揺。もう帰ろうよ。腹減った」

「え~。もうちょっと。だってこれ面白いんだもん。

ねえ、あっち行っていい?」

ビョンホンの答えを聞かないうちに

揺はどんどん勝手に草むらの中に分け入った。

「おいおい。道無いよ。ここ」

「えっ!道がないところ走れないの?」

揺は大声で叫んだ。

「いいよ。どこ走っても。揺の好きなところに一緒に行くから。」

ビョンホンは呆れかえって笑いながらそう答えた。

バギーは雑草の茂った野原を楽しげに揺れながらグルグルと走っていた。



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